クリニック立地戦略の教科書 02. クリニックの立地は、
来院経路により3つに分類できる

各科目ごとに良い立地というのは変わることもあります。

地域によって、住んでいる人の年齢層や競合の数も異なるためです。

内科、整形外科、眼科などは、高齢者のニーズがある科目のため、その地域の65歳以上の人口総数(夜間人口)も指標になります。

年齢層や競合の数により差が出る例としては、同じ医療モールで開業したものの、ある科目は繁盛して、ある科目は苦戦するなどの事例があります。

一般的に急性疾患中心の科目は立ち上がりが早く、慢性疾患中心の科目は立ち上がりがゆっくりな傾向にあります。

各科目の標榜および
専門とするクリニックの数

各科目の標榜および専門とするクリニックの数

各科目を標榜しているクリニックの軒数を確認しておきましょう。クリニック(診療所)の数は全国で約10万軒あります。

〈 診療科名別にみた医師数 〉

当然、一つのクリニックで複数科目を標榜している場合もあり、標榜している軒数や主たる科目(専門)のクリニック数はあくまで目安であることご了承ください。

● 内科

内科を標榜しているクリニックは、全診療科目の中で最も多く約6万軒あります。内科を主たる科目としているクリニックは約4万軒あります。

内科の各専門領域においては、消化器内科(約2万軒)、循環器内科(約1.2万軒)、呼吸器内科(約0.7万軒)の順で標榜が多いです。

神経内科や血液内科など標榜しているクリニックが少ない科目ほど需要が少ない傾向にあるため、それらの科目中心に診療する場合、立地が限定されるかもしれません。

クリニック名に専門科目名を含めるクリニックも増えています。例えばですが、ABC内科・内視鏡クリニック、ABC内科・糖尿病クリニックなどがクリニック名になります。専門科目をクリニック名に掲げると、それ以外の内科系の科目の患者さんが減りますので、総合的に判断する必要があります。

より専門性の高い科目をクリニック名に含める場合には、競合数やその地域にニーズがあるかどうか慎重に検討するべきです。より専門性が高い場合には、入院設備のある病院が競合になることもあります。

● 小児科

内科と一緒に標榜されることが多く、標榜しているクリニックは約2万軒あります。小児科を主たる科目としているクリニックは約0.5万軒あります。

家の近くにある通りがかりの内科と一緒に標榜している小児科へかかったり、ママ友などリアルの口コミで小児科を知ったりすることもあります。

競合が小児科専門のクリニックなのか、内科中心で小児科も診療しているのかによって、競合になる度合いは異なるでしょう。

● 皮膚科

内科、産婦人科、泌尿器科などと一緒に標榜されることが多く、標榜しているクリニックは約1.2万軒あります。皮膚科を主たる科目として標榜しているクリニックは約0.5万軒あります。美容皮膚科も診療するなら、美容クリニックもチェックします。

競合が皮膚科専門のクリニックなのか、内科中心で皮膚科も診療しているのかによって、競合になる度合いは異なるでしょう。

● 整形外科

整形外科を標榜しているクリニックは、約1.2万軒あります。整形外科を主たる科目として標榜しているクリニックは約0.7万軒あります。

● 眼科

眼科を標榜しているクリニックは、約0.8万軒あります。

その多くが眼科を主たる科目として標榜しています。

● 耳鼻咽喉科

耳鼻咽喉科を標榜しているクリニックは約0.6万軒あります。

耳鼻咽喉科は、大人であれば、内科、呼吸器内科、子供であれば、小児科と競合します。競合となる耳鼻科だけでなく、小児科や内科もチェックする必要があります。

● 産婦人科

産婦人科を標榜しているクリニックは約0.4万軒あります。内科、小児科、皮膚科、美容皮膚科、泌尿器科なども一緒に標榜する場合と、レディースクリニックとして、産婦人科、婦人科のみを診療するなどがあります。

● 泌尿器科

内科、産婦人科で一緒に標榜されることが多く、泌尿器科を標榜しているクリニックは約0.5万軒あります。高齢化とネット検索の発達により、泌尿器科単科で開業するケースも増えています。

クリニックの立地は来院経路により、
3つに分類できる

クリニックの立地は来院経路により、3つに分類できる

あらためて確認すると、2個以上科目を標榜しているクリニックも多いことがわかります。

標榜している軒数および専門とするクリニック数によって、大雑把ではありますが、通りがかり中心、通りがかりとネット両方、ネット中心の3つに分けることができます。

● 通りがかり中心(一般内科)

内科を主たる科目としているクリニックは約4万軒、標榜しているクリニックは約6万軒になりますので、歯科を標榜しているのは約7万軒、コンビニは約5.5万軒と同じくらい軒数があります。

クリニックの数が多く、通りがかりで認知されやすい科目です。

ネット経由でも来院はありますが、その地域に住んでいる人や働いている人に限られます。

● 通りがかりとネット両方(小児科、
一般皮膚科、整形外科、眼科、耳鼻咽喉科)

主たる科目としているクリニックが約0.5万軒から1万軒であり、一般内科の10分の1から5分の1になります。

ちなみに、マクドナルドは0.3万軒、携帯キャリアショップ(ドコモ、ソフトバンク、auの合計)は0.8万軒あります。そうすると、マクドナルドや携帯ショップの近くに開業すれば良いという考えもあります。

一般内科よりもかなりクリニック数が少なく、通りがかりだけでなく、ネットでも探されやすい科目です。

ネットで探した際にも、一般内科の方が軒数が多いため、それだけ患者さまは分散しますが、眼科、耳鼻咽喉科などは軒数が少ないため、分散しにくいです。

「地域名+科目名」「科目名+地域名」で検索される回数÷その科目を診療するクリニック数=1クリニック当たりのネット経由での平均患者数の目安になるため、同じ検索回数でもクリニック数が多い方が、1クリニック当たりの患者数が減ります。

逆に、小児科、一般皮膚科、整形外科、眼科、耳鼻咽喉科、消化器内科、呼吸器内科でネット経由で来院がほぼないというクリニックは、ホームページに問題がある可能性が高いといえるでしょう。

より専門性の高い治療や医療設備があるクリニックは、ネット経由での来院比率が高まる傾向にあります。

● ネット中心(産婦人科、泌尿器科、
精神科、美容皮膚科、手術)

主たる科目としているクリニックが約0.5万軒以下であり、通りがかりとネットの両方の科目よりも数がかなり少なくなります。

高齢者よりも若年者の方がネットで検索しやすい傾向にあるため、若年者の多い科目ほどネット中心になりがちです。

通りがかりで見つけられにくく、主にネットで探される科目です。

ラーメン屋か中華料理屋か

クリニックを診療科目ごとにラーメン屋と中華料理屋に例えるなら、ラーメン屋は一般内科のみを専門に診療しているクリニックであり、ラーメン以外も中華料理屋は、一般内科だけでなく、小児科、皮膚科も診療しているクリニックになります。

良い悪いは別としても、臨床研修が2年間必須となったことや、クリニック間での競争が激しくなりつつあることから、より多くの科目を標榜する科目が増えていくことでしょう。

住宅街であれば、内科、小児科、皮膚科、オフィス街であれば、内科、皮膚科の組み合わせが増えています。

一般内科は立地が8割、
ネット力1割、採用力1割

一般内科における開業は立地が8割とお伝えしてますが、残りの要素は、ネット力1割、採用力1割と考えています。

世の中のクリニックの半分ほどは、一般内科中心に診療していますので、クリニック開業は立地が8割とお伝えしているのです。

科目によってネットの重要度は異なります。

例えば、一般内科と泌尿器科を診療しているクリニックであれば、一般内科と泌尿器科の来院経路は大きく異なります。

マイナー科目は立地7割、
ネット力2割、採用1割

眼科、整形外科、小児科、耳鼻咽喉科、内科系の各専門科目(消化器内科、呼吸器内科など)においては、立地7割、ネット力2割、採用1割と考えています。

ネット力1割、2割の部分は、「地域名+科目名」の検索キーワードで、マップ検索や自然検索で上位表示されるかどうか、ホームページが来院されやすい内容であるかどうかの2つに分けられます。

超マイナー科目は立地4割、
ネット力5割、採用1割

よりネット力が患者数に比例しやすい精神科、美容、産婦人科、泌尿器科のクリニックやターミナル駅周辺で通りがかりによる来院が見込めない地域においては、立地4割、ネット力5割、採用1割と考えています。

ネット力5割の部分は、「地域名+科目名」の検索キーワードで、マップ検索や自然検索で上位表示されるかどうか、ホームページが来院されやすい内容であるかが2割だけでなく、「疾患名」で自然検索で上位表示されるかどうかと「地域名+科目名」「疾患名」などの検索キーワードで検索連動型広告を出し運用するなど3割の要素も加わります。

特に「疾患名」「疾患名+○○」は、同じ地域の競合と大きく差がつきます。

また、クリニックだけでなく総合病院が競合になる可能性もあります。

3. 電車社会の
繁盛する立地とは?
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