クリニック立地戦略の教科書 03. 電車社会の
繁盛する立地とは?

電車社会というのは、明確な定義はありませんが、主にスーパーやコンビニなどへ買い物に行く際には、歩いていく人が多い地域で、遠くに行くには車ではなく電車を使います。

日本国内でいえば、東京都23区内、大阪府の一部、地方の都市などが該当します。

クリニックへの通勤時間が短い方が良い

自宅から最寄り駅、駅から駅、駅からクリニックの流れになります。

毎日何十年も自宅からクリニックへ通勤するわけですから、ドアトゥドアで30分以上かけて通勤するのは効率的であるとはいえません。

仮に、自宅からクリニックまで徒歩10分の場所にあれば、通勤時間は1日20分になります。

自宅からクリニックまで徒歩10分+電車25分(平均待ち時間5分含む)+徒歩5分の場所にあれば、通勤時間は1日80分になります。電車はすぐ来るとは限らないので、待ち時間が発生することも計算に入れます。

1日当たり60分余計に時間がかかるわけですから、時給ベースで換算すると時給1万円の医師なら1万円ですが、売上ベースで換算すると1時間に8人診療し単価が5000円とすると4万円になります。

その分働いた方が合理的というわけです。その差分を埋めることができる立地というのはなかなかありません。

人それぞれ価値観がありますので、通勤時間が長いことを否定しているわけではありませんが、70歳、80歳になっても通勤を続けることになり、肉体的にも負担になってしまう可能性もあるでしょう。

もし、開業場所から徒歩10分以内に住んでいるのであれば、患者さんと顔を合わせることになりますが、挨拶をするなど地域に溶け込むことにより、自然に営業活動することができます。

もちろん、ご近所付き合いが苦手で同じ地域に住みたくないということであれば、別の駅に住むのも選択肢の一つではあります。

隣駅に住んで自転車で通勤する場合もあります。

乗り換えがある場合には次の電車が来るまでの待ち時間が増えるだけでなく、遅延なども発生する確率が高くなってしまいます。

開業するまでは、
家を買わない方がいい?

開業するまでは、家を買わない方がいいという考えもあります。開業するまでは賃貸に住み、開業して収入が安定し、子供が小学校、中学校、高校などに入学するタイミングで家を買うという方法もあります。

開業して1日当たりの新規患者さまがどれくらい来院されるかによって、5年後、10年後の1日当たりの総患者数を推定できますし、おおよその収入も予想することができます。家について人それぞれ価値観があるでしょうが、最大でどれくらいの土地・建物もしくはマンションを購入できるかも、ある程度決まってきます。

特に、電車社会において、車社会よりも土地やマンションが高く、より競争が激しい地域で開業することが多いためです。

開業する前に借金して家を購入すると、開業するときに追加で借金しにくくなることもあります。

あくまで個人的な意見ではありますが、私は、将来的には子供も巣立っていくので、あまり広い家を買う必要はないとも考えています。

子供が産まれてから子供が部屋が必要になるのが6歳、大学に入学するのが18歳とすると、最短で12年間くらいしか同居しません。

子供が巣立ったら、2人で住む家に引っ越す方が合理的ではあります。そのときになって初めて、家を購入するというのも選択肢です。

また、結婚している夫婦の3組に1組が離婚する時代です。離婚する可能性があるということも忘れてはいけません。離婚したら、1人分の空間が必要なくなります。

私は子供が5人くらいいることもあり、開業後15年してから家を買いましたが、今でもマンション賃貸派です。なぜ、マンション賃貸派なのかについては、こちらのページに記載しています。

持ち家不要論のページへ

余談ですが、若手で未婚の開業志望の先生には、開業してから婚活することをおすすめしています。時間的にも経済的にも余裕がある状態の方がしっかりと相手を見極めることができますし、勤務医より開業医の方が異性に人気があります。

「開業するまでは、家を買わない方がいい?」というのも、極端な意見で、実際に、自宅を購入していたらなかなか厳しいかもしれませんが、開業場所を選び、住みたい街を選ぶことができるのも開業の魅力かもしれません。

好きな街、住みたい街であれば、多少競合が多く患者数が見込めない地域でも、おすすめすることもあります。

住みたい街が決まると、最寄り駅が単線の駅で電車に乗っている時間を20分以内とするなら、上り10駅、下り10駅ほどがあるとします。20駅のうち需要が供給を上回る、競合が弱いなどの条件で5駅ほどに絞られるなど、かなり限定されてしまうことも少なくありません。

住む街の最寄り駅が単線の駅よりも複線以上の駅の方が開業場所の選択肢が広がることになります。

場合によっては、自宅を賃貸にする、売却するなどして、通勤時間を短くするために、家族ごと引っ越しをするのも選択肢です。

人気のある場所から人気のない地域へ

一般的な傾向として、都心に近づくほど人気があり、人口当たりのクリニック数が多く競争が激しくなる傾向にあります。

開業する医師は子育て世代のことが多く、大手学習塾などがあり教育環境が良い地域など、都心に住むことを選びがちです。

開業場所としては、より地方の方が競争が激しくないため、基本的には、都会から地方に電車で向かうことになります。通常、通勤している人は地方から都会ですので、電車も空いています。

昼間人口と夜間人口を比較することで
どのようなことがわかる?

昼間人口=夜間人口+流入人口-流出人口

昼間人口(ちゅうかんじんこう)は、夜間人口(やかんじんこう)=住んでいる人の数に、他の地域から日中通勤してくる人口(流入人口)をプラスして、他の地域へ通勤する人口(流出人口)をマイナスして算出されています。

国勢調査で通勤や通学先を集計されており、少数かもしれませんが、夜間に通勤や通学している人も、昼間に勤務や通学とみなされて昼間人口に含んでいます。 昼間人口には、買物客や観光客などの移動は含まれていません。

〈 昼間人口 統計局ホームページ 〉

昼間人口が夜間人口より多いと日中流入してくる人が多いということですから、オフィスや商業施設などの通勤先があるということになります。

逆に、昼間人口が夜間人口より少ないということは、日中流出する人が多いということですから、ベッドタウンということになります。

東京都23区内は、昼間人口が夜間人口よりかなり多く、埼玉県、千葉県、神奈川県は、昼間人口が夜間人口より少ないです。

競合が少ない地域を狙うのが基本

それでは電車社会では、どのような立地を探していけばいいのでしょうか?

東京都内の駅周辺では、競合が全くない地域を探すのは難しいでしょう。

駅近くの競合が少ない地域を狙うのが基本になります。

需要が多く供給が足りない地域があり、駅の東口と西口に分かれていたとします。西口にクリニックが1つあり東口になければ、東口に開院することが基本になります。

なお、空白地であるからどこでもいいわけではありません。将来競合が開院する際には、自院とは逆側の西口に開院してもらいたいので、できるだけ良い立地を選びたいものです。

ターミナル駅を起点とした各路線

ターミナル駅を起点とした各路線

東京都内でいえば、以下の路線などがあり分類することができます。(細かい路線名は省きました)

● 新宿、渋谷、池袋などのターミナル駅に
アクセスの良い路線

・山手線
・埼京線
・湘南新宿ライン

● 新宿駅

・中央・総武線
・小田急線
・京王線
・京王新線
・西武新宿線
・丸ノ内線
・大江戸線
・都営新宿線

● 渋谷駅

・東急東横線
・丸ノ内線
・東急田園都市線
・半蔵門線
・銀座線
・京王井の頭線

● 池袋駅

・東武東上線
・西武池袋線
・有楽町線
・副都心線
・丸ノ内線

● その他

・南北線
・三田線
・東西線

新宿などのターミナル駅が終点よりも、その先まで行ける(相互乗り入れ)方がより便利かもしれません。

人と会うときはターミナル駅近くやターミナル駅を経由することが多いでしょうから、池袋、新宿、渋谷のうち、どの街が好きかも基準の一つになります。

教育環境が良いとされている小学校区

〈 東京・小学校区「教育環境力」ランキング【学力偏差値トップ25】 〉

〈 【東京都】中学受験に強い人気公立小学校ランキング:私立小学校との比較 〉

単線の駅よりも、複線の駅など規模の大きな駅ほど、競合の数が多くチェーンクリニックと競争する確率が高くなります。

特に山手線の下半分は激戦区

特に山手線路線図の下半分(新宿駅から東京駅くらいま)の地域は医師からの開業人気エリアです。

医師は高所得者が多く、土地の価格、物件の賃料が高いところに住んでおり、住んでいる場所から近い地域に開業する傾向にあるからです。

人気エリアほど1クリニック当たりの患者数が減少傾向にあり、しかも物件の賃料や人件費が高く、採算が取りにくくなります。

地方に行くほど競合が少なくなる

関東地方でいえば、山手線路線図の下半分を中心に、地方に行けば行くほど、競合が少なくなる傾向にあります。

統計的にも、東京都23区外、埼玉県、千葉県は、東京都23区内よりもクリニック数が少なく、1クリニック当たりの患者数も多い傾向にあります。

人口当たりの診療所数の違い

東京都 人口1350万人 診療所数12000軒 人口一万人当たり診療所数8.64
神奈川県 人口910万人 診療所数6000軒 人口一万人当たり診療所数6.58
埼玉県 人口730万人 診療所数3700軒 人口一万人当たり診療所数5.13
千葉県 人口620万人 診療所数3200軒 人口一万人当たり診療所数5.22

東京都とそれ以外の各県においては、人口当たりの診療所数がかなり異なることがわかります。

東京都内も都心、都内、都下で人口当たりの診療所数は大きく異なります。

東京都内は競争度合いにより
3つの地域に分類

東京都内は競争度合いにより、都心、都内、都下の3つの地域に分類することができます。

イメージとしては、都心>都内>都下=神奈川県=埼玉県=千葉県です。

基本的には都心から離れるほど、競争が緩やかになる、データ的にも1クリニック当たりの患者数が増える傾向にあります。

神奈川県、埼玉県、千葉県でも都内に近いところよりも遠いところの方が患者数が増えます。

● 都心

千代田区、中央区、港区、渋谷区、新宿区、文京区は都心6区と呼ばれます。これら6区のうち、千代田区、中央区、港区の3区を都心3区、文京区を除いた5区を都心5区と呼ぶこともあります。

都心6区などは、オフィス街や住宅街がある電車社会で、家賃や人件費も高くクリニック数も多く、クリニック間の競争がもっと激しい地域になります。

● 都内(23区ー都心6区)

東京都内の都心6区を中心とすると、より外側の23区内のうち残り17区は住宅街がある電車社会で、その次に競争が激しい地域になります。

● 都下

より外側の都下(とか)=東京都23区外は住宅街がある車社会で、最も競争が激しくない地域になります。

神奈川県、埼玉県、千葉県の大部分は車社会になり、都下と同じように都心や都内よりも競争が激しくない地域になります。

電車社会と車社会の境界の地域になると、自転車やバスでの来院も増えます。具体的には、最寄り駅まで10~15分以上の距離に住んでいる人は、自転車やバスの利用が増える傾向にあります。

駅周辺は電車社会で、駅から離れた場所は車社会と分かれている駅もあります。

電車社会は3つに分類できる

電車社会は3つに分類できる

電車社会は、住宅街、オフィス街、商業エリアの3つに分類することができます。

明確に3つに分かれるわけではなく、住宅街とオフィス街、オフィス街と商業エリアが混在している地域もあります。

それぞれの場所を歩いている人は、住宅街であれば住んでいる人、オフィス街であれば働いている人、商業エリアであれば住んでいる人ではなく買い物客が中心になります。

将来的に患者さまにならない人はカウントしません。

1) 住宅街

住宅街の単線の駅周辺には、スーパー、大型ドラッグストア、ファーストフード、100円ショップなどがあり、半径500m~1㎞以内に住んでいる人が通りがかりやすいエリアになります。

スーパーは、生活に必要な物が揃っており、平均すると週2~3回来店するとされています。

電車社会の住宅街であれば、駅とスーパーの動線上にクリニックを開院するのが王道になります。

ちなみに、朝や夜の通勤時間帯に歩いている人は急いでいるため、認知されやすさが低い傾向にあります。

2) オフィス街

オフィス街の駅周辺には、高層ビルなどのオフィス街があり、半径500m~1㎞以内に働いている人が通りがかりやすい場所になります。

高層ビル内のテナントとして一般内科が入居していることも少なくありません。

大規模なオフィス街では飲食店や商業施設などの店舗で働いている人も通りがかります。

例、新宿駅西口、東京駅、品川駅、新橋駅など。

3) 商業エリア

複線や3線以上の駅周辺には、ショッピングセンター、家電量販店、デパートなど、半径500m~1㎞以内に住んでいる人は少なく、遠方から電車に乗ってきた買い物客が通りがかりやすい場所です。

商業エリアの店舗で働いている人も通りがかります。

例、新宿駅東口、渋谷駅、池袋駅、銀座駅、秋葉原駅、上野駅、吉祥寺駅、町田駅など。

その他、観光客も訪れますが、将来的に患者さまにはなることはまずありません。

駅によってバラツキがある

一般内科であれば、競合が全くない地域はないかもしれませんが、一般内科以外、特にマイナー科目にいえることなのですが、駅によって、競合の数にかなりのバラツキがあることがあります。

当然、競合の数が少なく、競合が強くない地域が良いといえます。

とはいっても、駅周辺は競合が少ないため開業場所に選んだものの、数年後に近くに競合が開院して、競合が多い地域になってしまうこともありますので、油断することはできません。

将来的に再開発などで医療モール計画されているのかも含め調べた方が良いでしょう。

マイナー科目ほど、電車で遠方から来院

マイナー科目になればなるほど、電車で遠方から来院があります。単線よりも2線、乗り入れ路線が多いほど広範囲からの来院が見込めます。

電車社会の認知されやすさ

● 看板

看板には、位置、大きさ、デザインなどの要素があります。看板を見て一瞬でどのような業種であるのかわかる必要があります。

〈 取扱看板の種類 〉

位置

看板の位置は非常に重要です。人は上を向いて歩いているわけではなく、前の人の肩から腰の辺りを見ながら歩いています。

最近では、スマホを見ながら歩いている人もおり、そうなるとより目線が下になり視界が狭くなります。

看板を高すぎる位置に設置しないように気をつけつつ、壁面看板やスタンド看板は目線に設置します。

道路に面しているクリニックの壁面やガラス面(カッティングシート、インクジェットシートなど)に看板を設置します。診療科目、診察時間、休診日などを掲載します。

通行方向と看板の角度により認知されやすさは違います。

通行方向と平行に設置するよりも垂直に設置する方が、道を歩いている人に看板を認知されやすくなります。

大きさ

看板は大きい方が遠くから見えます。通りがかるときも大きい看板の方が目立ちます。

● クリニック外観

間口の広さ、セットバックしていないか、入り口、中の様子が見えるか

間口が狭いより広い方がクリニックが目立ちます。

セットバックとは、建物の前面が歩道から後退している状態です。セットバックがあると看板やクリニック入り口が奥になりますので、その分目立たなくなります。

段差があることによって、ベビーカー、老人、車椅子がクリニックに入りにくくなってしまいます。場合によっては、スロープを設置することもあります。

● 角地、T字路

必ずしも角地やT字路でなくてはいけないというわけではありませんが、角地は、2つの方向から人が歩いているため、通行方向が1つの方向の場合よりも認知されやすくなります。T字路も認知されやすいといえます。

● 信号機、横断歩道

信号機や横断歩道があると、立ち止まりやすくなるため、看板やクリニック外観に気づきやすくなります。

電車社会ではどの
ような場所が良いのか?

開業志望の先生に「(電車社会では)どのような場所が良いのか?」と聞かれたら、私は、駅前徒歩3分以内の1階が良いと答えています。坪当たりの賃料が高くても、通りがかる人数が多く認知されやすい、その地域において認知度が高い立地が良いと考えています。

内科だけでなく、小児科、皮膚科、眼科、整形外科、耳鼻咽喉科などであれば、ネットだけでなく通りがかりの要素も大きいです。

ハンバーガー、牛丼、定食屋、ドラッグストア、携帯キャリアショップ大手チェーンなどの近くが基準になります。立地調査の専門家により採算が取れる場所と判断した立地であるからです。

前のテナントがどのような業種だったのかも参考になります。

もちろん、賃料が高くても立地が良くないこともあるので、賃料が高ければ良いというわけではありません。

ただし、電車社会において、駅徒歩3分以内であっても、極端に認知されにくい物件や坪1万円を切る物件は避けた方が無難でしょう。

例外としては、ターミナル駅近くの1階は1坪当たりの賃料が高すぎるため、精神科、美容、産婦人科、泌尿器科はネット集患のみになるため、規模の大きな駅徒歩3分以内の空中階の方が良いと思われます。

駅前1階の家賃相場が
高い場所も選択肢

一般的に、家賃はその物件がどれくらい収益を上げるかで決まりますが、所得や年齢層など地域にもよりますが、人が集まる場所ほど家賃が高い傾向にあります。

人が集まりにくい家賃が安い地域であれば、競合も安い家賃で駅から近い1階に開院できてしまいます。

人が集まりやすい家賃が高い地域であれば、競合は空中階や駅から遠い1階に開院する傾向にあります。

当然、人が集まりやすい家賃が高い地域の駅から近い1階で開院した方が、それだけ差がつくことになります。

なんらかの要因で家賃相場の高いところで安く借りれることもあるでしょうが、良い立地ほど家賃は高いです。

現在、歯科では土日や夜遅くまでやっているクリニックなどが駅前1階に進出しており、今後、医科でも同じことが起こる可能性が高いでしょう。

家賃の高い場所で開業する時代へ

家賃の高い場所で開業する時代へ

競争が激しくなければ、家賃の安いところでも標準的な人数の患者さまが来院してました。

競争が激しくなったら、家賃の安いところでは患者さまがあまり来院しなくなり、家賃の高いところで標準的な人数の患者さまが来院します。

競争が激しいと家賃が高くないところでないと患者さまが集まらなくなり、その分、利益は減少するということです。

人が集まる家賃が高い駅前の空中階で開院しない理由としては、ネット上で上位表示されなくなったり、チェーンクリニックやネットに強いクリニックが開院したりしても、立地の優位性によりクリニックを安定化させることができるためです。

よっぽどのことがない限り、少なくとも10年は移転しないことがほとんどなので、開業後10年間を見据えて開業したいものです。

30坪で坪1万円の家賃差は
新患1名増えると採算が取れる

仮に30坪で坪1万円、30坪2万円の立地があったとすると、1ヶ月で30万円の家賃差があります。30万円売上を増やすには、1日当たり15000円、1回単価5000円、3回受診しLTV(生涯顧客価値)15000円とすると、1日新規患者さまが1名多く来院されれば、採算が取れるということになります。

激戦区や家賃が高い地域では
小さく開業することも

電車社会において、激戦区や家賃が高い地域で開業するなら、駅前の1階であまり広くない物件に開院するのも選択肢かもしれません。

患者さんが増えたら、同じく駅前の1階で広い物件に引っ越す作戦もあり得ます。

激戦区では最初は看護師を
雇用しない方がいい?

開院当初は、看護師を雇用せず自分で採血すれば、看護師の年間人件費約500万円、2人雇用するなら年間人件費約1000万円の費用が発生することはありません。

激戦区ではこれからクリニックは1クリニックあたりの患者数が少なくなっていくため、小型化していくと予想されます。

私は坪当たりの家賃が高い場所で開業するのは躊躇するのに、看護師を雇用するのに抵抗がない先生が多いことが不思議でしょうがないです。

最初はどこのクリニックも患者さまは少ないのですから、患者さまが増えたら、年間人件費が約500万円かかる看護師を1人雇用する、1人でも負担が大きくなったら、2人雇用するのが合理的でしょう。

同様に、医療事務についても、2人もしくは3人の最小限から始めるのが良いのではないでしょうか。

電車社会で苦戦しやすい立地とは?

逆に、電車社会で苦戦しやすい立地もあります。

競合が少ない地域以外の電車社会において、複線や規模の大きな駅から徒歩5分以上(単線の駅なら3分以上)の空中階にあるクリニックは、2階でよほど視認性が良い例外はあるにしても、苦戦しやすい傾向にあるようです。

ネット集患においても、駅から遠い場所ですと、電車を利用して最寄り駅から来院する人にも敬遠されがちで不利になります。

隣駅が近いと診療圏が分断されやすい

特に都心においては駅と駅が近く、駅ごとに診療圏が分断されていることもあります。人間の心理的にも行き慣れた最寄り駅近くのクリニックに行きます。

隣駅や他の路線の駅との距離が近いと、間に住んでいる隣駅から近い地域の人は、そちらの駅前にあるクリニックへ行ってしまいます。

半径500mの人口数は多いのに、複数駅があり診療圏が分断されてしまっているケースもあります。

最寄り駅に競合が少ないのは良いのですが、隣駅や他の路線の駅には競合が多いということもありますので、俯瞰して分析する必要があります。

4. 車社会の繁盛する立地とは?
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