開業医のための労務トラブル対策 06.医療事務とのトラブルの実例

今までクリニックで起こった医療事務とのトラブルについて実例を挙げながら、どのような教訓を得たかについて説明します。

トラブルとなったスタッフのプライバシーもあるため、匿名かつ細かい点は変えており、あくまでフィクションになることご了承ください。

面接で申告していた能力と実際が
違いすぎる

医療事務のトラブル

うちのクリニックでは、即戦力となる医療事務経験者のみを雇用しています。未経験者や少ししか経験がない人は雇用していません。

医療事務としてレセプトまではできると、面接ではできると言っていたことが実際は全然できず、足手まといまではいきませんが、他の医療事務がつきっきりで指導しないといけない状況でした。結局、試用期間内で退職してくれましたが、面接と実際が違いすぎることはあります。トライアル勤務で実際たしかめて雇用することをおすすめします。

雇用した事務長するも孤立

知人から「事務長を雇うといいよ!」と親切にもアドバイスをもらい、他のクリニックでも経験のあることもあり、医療事務8人をまとめる役として雇用しました。

人格的におかしい人ではありませんでしたが、元々いた医療事務スタッフへの指導がうまくいかず、孤立してしまいました。院長と医療事務との橋渡し役が、事務長と医療事務との橋渡しを私がやるようになってしまいました。

結局、事務長がやりずらかったのか、ちょっとしたら辞めてしまいました。事務長が横領する、機能しない、院長と対立するなどトラブルを起こす話はよく聞きますが、事務長を雇えばすべて上手くいくというわけではありません。

元CAの接遇の専門家を雇用するも

受付スタッフ(医療事務)への接遇へのクレームが多い時期があり、航空会社の関連企業からの派遣により、週3日の非常勤として指導してくれる元CA(客室乗務員)の専門家に来てもらいました。

私は特にCAが好きなわけではありませんが、受付で「こんにちは!」と爽やかな対応をされれば、「このクリニックはいいなぁと患者さまが感心してくれるのではないか」とバラ色の接遇を夢見ていたのかもしれません。最初は、いや、最初から最後まで医療事務は嫌がっていましたが、指導はしてくれて表面上の言葉使いは丁寧になりました。

しかし、中身までは指導徹底されているわけではないので、心が籠もっていないようにも思えました。私の指導力不足なのかもしれませんが、医療事務から接遇の専門家へのクレームというか文句が多くなり、専門家が来ない日には言葉使いが戻っていて、あまり効果を感じず、数ヶ月で契約終了となりました。

外部から人を入れる場合は、お互いのために立ち位置明確にすると良いでしょう。来てもらったことにより、意識改革にはなったかもしれませんし、言葉使いは若干良くなった気もします。

試用期間終了後に、勤務態度豹変

試用期間中は、猫を被っておとなしくしていて、試用期間が過ぎると急に勤務態度がおかしくなる従業員もいます。

試用期間は普通でしたが、試用期間終了してから受付医療事務として、明らかに患者さまへの対応もいい加減になり、明らかに勤務態度が悪くなりました。指導はするものの、「どうせ辞めさせられないだろう」と、試用期間後ということで鷹をくくっていました。

70万円横領した医療事務を
現行犯で検挙

横領事件が発生したこともあります。自費の薬や検査を売り上げから除外して、売り上げが合うように、自費の薬や検査を0円にして会計を合わせるという方法でした。帳簿の金額は合うので、税理士は気づきませんでした。

なぜ、薬代が0円になっているのか不思議に思い、ベテランの医療事務が気づきました。毎回、横領していた医療事務が遅番の時だけに起こるため、遅番のときに現行犯で検挙したのです。自由診療は保険請求しないため、横領されやすいようです。録画できる防犯カメラを導入しておくと抑止力になるかもしれません。

希望の日に休みが取れず
その場で退職

それは夏の暑い日の診察時間中の午前11時くらいのことでした。

入職してから1ヶ月ほどの医療事務のスタッフが、「夏休みを取りたいので、5日間ほど休ませてほしい」と相談がありました。以前より、別の医療事務が休むことが決まっており、休んでしまうと患者さまにも迷惑をかけてしまいます。「その日は休まないでほしい」とお願いしても、お休みするとのことでした。

話し合いましたが、「気分が悪くなったので帰ります。もう来ません、辞めます」と宣言して、他のスタッフに「お世話になりました」と言って帰ってしまいました。その後、クリニックは医療事務不足で、とても困りました。学んだこととしては、辞める人間はその場で退職することもあるので、休暇の要求は飲まざるおえないということでした。クリニックのルールを説明して、それでも休む人は放置しておくしかないのです。

7.看護師とのトラブルの実例
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